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飲食店と本末転倒な衛生検査

飲食店

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飲食店まわりで仕事をしていると、「衛生検査」の話に事欠きません。飲食店に対する衛生検査は、各地域の保健所が飲食店に対して行う場合もあれば、会社や商業施設が業者に依頼して行う場合もあります。衛生検査があるから、飲食店の衛生環境は大丈夫かというと、残念ながらそうではありません。今回は飲食店と衛生検査について、小話程度に記そうと思います。。


食品の検査、立ち入りでの検査のどちらにしても、通報などによって保健所が抜き打ちで検査する場合もありますが、基本的に飲食店へ事前通告があります。業者さんに依頼している場合も、「何日の何時くらいに伺います」と連絡があります。当日は、キッチンの状態はもちろん、道具や食品の衛生状態や取り扱い方法、各種管理記録などが検査されます。具体的には包丁やまな板、食品の細菌などを調べたり、洗浄後の従業員の手を調べたり、他にも目についたところは指摘を受け、その場で改善できるものは改善します。後日結果を受けて、改善策を講じます。改善が見られない場合や衛生管理に重要な欠陥があった場合は行政処分を受ける可能性もあります。


じゃあ飲食店は衛生検査に向けて真面目の取り組んでいるのかというと、いくらかの飲食店はそうではありません。どうするかというと、衛生検査用の包丁やまな板、食材を用意するんです。酷いと新品を買うようなお店もあります。なぜかって、普段使っているものが検査されれば、いい結果なんて出ようがないとわかっているからです。もちろん、お客さんに出す料理に使用しているのは、「衛生検査には出せない包丁やまな板、食材」です。衛生検査の対象が、衛生検査に向けて用意されたものなんて、そんな本末転倒なことが許されるのでしょうか。


さらに拍車をかけて、衛生検査を行う側もそれがわかっていて衛生検査をしています。もちろん取り扱いに関して改善を促したり、チェック事項に漏れていれば注意はしてくれます。ですが不思議と、あからさまに「衛生検査用」のものを拒否したりはしません。「どれを検査すればいいですか?」なんて聞いてきます。


悪い「流れ」があるから、なかなか踏み込めないのも分かります。衛生検査用に用意された検体を拒否すれば、激昂する従業員がいることも想像に難くありません。また業務規模で生肉などを扱う場合などは、「どうしようもない」というのも分かります。衛生管理を徹底すればするほど、時間も足りなくなりますし、商売が成り立たなくなります。飲食店の利益なんて数%あるかないかという世界ですので、「衛生を徹底すれば赤字」という店も多いのが現状です。


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ただこの問題は、従業員の衛生観念でおおよそ看過できる段階まで持っていけます。正しい知識を有して、要所要所の手洗い・作業の分離などを個人レベルで行えば、不特定多数に提供して差し支えない衛生状態にはなります。しかし現状は全くもってダメです。多くの飲食店がひどい衛生観念の上で営業されています。書いたのはかなり前ですが、このへんは関連記事を御覧ください。

  1. 飲食店には、衛生観念の低い「おっさん」が潜んでいる - 生かし屋さん。
  2. 日本の生食文化は妄信的な安全性のうえに成り立っていないということ - 生かし屋さん。
  3. なぜ飲食店は人手不足に陥るのか~原因と理由~ - 生かし屋さん。


では体をなしていない衛生検査の影響はどのあたりに出ているのでしょうか。ニュースになるような食中毒などがあれば分かりやすいですが、いうほど件数は多くないんじゃないかと思うかもしれません。僕が懸念するのは「食中毒だと気が付かない程度の食中毒」です。「プチ食中毒」とでもいいましょうか。「なんとなく体調が優れないけれど、心当たりがない・・・」みたいな症状の原因として、プチ食中毒が考えられます。ちょっとお腹が痛いとか、「昨日体冷えたかな?」くらいにしか思わなくても、実は昨日飲食店で食べた料理が原因かもしれません。プチ食中毒をおこすような衛生環境は、いつか大規模な食中毒をおこす可能性が大いにあります。食中毒は最悪死者も出ますからね。プチ食中毒ぐらいならいいではなく、万全を期すために、プチ食中毒すら許さない衛生環境で作った料理を提供してもらいたいものです。


それに、単純に気分の良いものではないですよね。生肉を触った手でそこら中を触り、また別の人がそこを触って、自分の食べる料理に触れることも往々にして考えられます。生肉に汚染された水なども、多くの人が意識していないのが伺えます。事実、カンピロバクターの感染原因には、鶏肉など生肉そのものの他に、汚染された水が上げられています。ドリップなどが付いた容器などを、食器と一緒に洗ったりすると、食洗機で殺菌されていたとしても、取り出す時にお皿が汚染されたりします。枚挙に暇がありませんが、このような生肉ロンダリングで、厨房内が次々と汚染されている飲食店がどれほどあろうか、色々な飲食店を見ていると、目を覆いたくなります。


前述の通り、衛生環境を整えるのもタダではないため、すぐに全体を解決するのは難しいと思います。でもまずは個人レベルの意識改革から、なされていけばなあと思います。同時に問題を上に上げ、行政レベルで適切な衛生検査を行える制度作りもなされていけばなあと思っています。僕の身の回りの飲食店でも、そうなるように促してはいますが、正直なかなか徹底は難しいです。まずは衛生に関する知識から、広まっていけばと思います。