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もう原価率は30%の時代ではない!?飲食店と原価率の小話


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飲食店と原価率のちょっとした小話です。原価率、フードコストですね、この記事ではざっくり食材の費用と考えてもらっていいです。飲食店の原価率は、一般的にに30%と言われています。つまり1000円のランチにおける食材費は300円だと。聞いたことがある方も多いと思います。少し例を出すと、ピザ屋さんで「1枚買うともう1枚無料!」なんてキャンペーンがありますね。これを見て、「1枚無料!?お得!」と思うか、「倍にしても利益が出るのか・・・」と思うかです(笑)。実際はピザ屋さんの原価は30%よりはるかに低く、上記のキャンペーンも宅配との兼ね合いがって、例としては杜撰なんですが、人件費や土地代も考えて、50%よりずっと低いことは想像がつくと思います。


ところがこれはもう過去の話で、最近では少し事情が違ってきています。最近といっても、けっこう前からですが。飲食店まわりで仕事させてもらうこともあるので、この辺について少し記していこうと思います。


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原価率は高くなっている!?


独自データなうえ、統計に足るほどの母数もないので、偏りがあるかもしれません。ですが世の中のトレンドも合わせて、妥当性のある話をしていこうと思います。さて原価率。こんな本があります。



原価率は40%にしなさいと。これは原価率30%と謳われるなか、人気店を引き合いに出して、「高くていい」と言っています。この本が発売されたのは2012年ですから、ちょうど原価率が高くて有名な「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」などを手がける俺の株式会社が設立された年です。ちなみにこの本の評判自体はあまり良くないです(笑)。原価率40%、どうなんでしょう。


今や原価率40%は、低いとも言えるんです。もちろん、依然として30%前後のお店が多いのは事実で、売上が悪いとオーナー側からは、「原価率を落とせ」と言われること請け合いです。一方で、40%を超えるお店もごろごろでてきました。中には50%を超え、さらに70%近くまで伸ばしているお店もあります。つまり最初に設定する戦略の方向性の違いで、お店によって原価率の開きが顕著になってきました。そして面白いことに、赤字率70%とも言われる飲食業界で、黒字のお店の原価率を見ていくと、赤字のお店に比べて高い傾向があります。母数は少ないですが、平均を取ると50%台にのったりします。


なぜ原価率の高いお店に利益がでるのでしょう。一般的にフード(食材費)30%、レーバー(人件費)30%程度で、FL比率(フード+レーバー)が60%を超えないような方針のお店がほとんどです。加えて家賃や光熱水費や諸経費を差し引いて、5~10%の利益が出ればと考えるのが一般的です。もちろんジャンルや形態によって開きはあります。原価率を上げるということは、他のコストを圧迫するということです。人件費を最適化し、諸経費を抑える、そういう工夫が必要になります。ただし一定のサービス・パフォーマンスを維持するには、他を極端に削ることもできません。ではどうなるかというと、薄利多売を目指すのです。


では原価率を高くすると、どのように料理が変わるのか、なぜ原価率が高い傾向があるのか、どのように薄利多売を実現するのかを見ていきましょう。


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原価率が高いとどうなるか


原価率を高くするということは、大まかに言いって次の2点のどちらかに、料理が変化することを意味します。


・料理の量が増える
・料理の質が高くなる


それぞれについて見てみましょう。


料理の量が増える


こちらの方向性のお店は、昔から一定数存在し、今なお生まれ続けています。「この金額でこの量を」というのがコンセプトになっています。ボリューミー、デカ盛り、満腹。このようなキーワードを掲げ、ターゲットとなる客層は、料理の量が増えて嬉しい男性です。中でも学生や若いサラリーマンを中心に、人気がでます。


学生とサラリーマンが行き交う土地で、ボリューミーで安価、ご飯に合う味付けで、かつご飯の大盛りまたはおかわりが無料のお店は、どこも安定して利益を上げています。そしてこういうお店は、飲食店の入れ替わりが激しい繁華街でも、息が長い傾向があります。


料理の質が高くなる


最近になって増えてきたのは、こちらの方向性のお店です。コンセプトは「この金額でこんな良いものを」です。量はさほどではないですが、高級店で高い金額を払ってしか食べられなかったものが、リーズナブルに食べられるお店です。


なぜ最近になって増えてきたか、すこし考えてみます。コンビニを筆頭に、近年では「高級志向」がトレンドです。たとえばセブンイレブンさんの「金のハンバーグ」や「金の食パン」など。オーガニックやスーパーフードなど、食に対する関心も高まっており、食べ物にお金をかける流れが強くなってきました。ですが決して景気がすごく良いわけではなく、その中で折り合いがつくのが、「コスパが良い」となります。前項の量が増えるのも「コスパが良い」ですが、上記の流れから、量は多くなくてもいいから、少しいいものを、という志向になってきました。


ターゲットとなる客層は、女性が中心になりますが、全ての人が対象になっています。量が多いと、女性や少食な人は訪れにくいのに対して、質が良い料理は人を選びません。また女性の同伴も考えると、多くの人を手中に収めることができます。これらを踏まえて、どのように薄利多売を実現するかを見ていきます。


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高い原価率はどのように成り立つのか


薄利多売、つまり少ない利益の積み重ねで、大きな利益を生むに際して、キーワードは「回転率」と「集客」です。


回転率とは、一定時間あたりに、ある1つのイスに何人が座ってくれたか、です。テーブル・席数・客数と、計算の方法はたくさんあります。ここでは分かりやすいように、どれだけお客さんが多く来て、スピーディーに入れ替わるかを、ざっくり回転率とします。回転率を上げるための施策として、一般的に以下のようなことが挙げられます。


・立食式にする
・音楽のテンポをあげる
・提供スピードを最適化する
・テーブルを小さくする
・事前清算式にする


中には椅子の座り心地を悪くするとか、あえていごこちの悪い空間作りを推奨している飲食店コンサルタントもいますが、絶対に長続きしないので、あくまで「お客さんに回転率を感じさせない」ような施策が必要になります。


以上のような施策を工夫し、ピークタイムの売上を伸ばすと共に、アイドルタイムにもどれだけ売上を維持できるかが、鍵となります。そして高い原価率に付随する集客の話。


原価率が高い、つまりコスパが良いということは、お客さん側からするとメリットしかないんですよね。回転率なんて、気にするお客さんは滅多にいません。「この値段でこれが食べられるなら、また来よう!」となり、リピーターになりやすくなります。そう思ってもらうためにも、先ほど述べたように、「お客さんに回転率を感じさせない」ことが重要です。他のお店で普通に食事するのと何ら変わらない雰囲気で、コスパの良い食事をしてもらう。居心地が悪くなければ、お客さんにとって回転率は関係ないので、他のお店と比較して、高い優先順位に位置付けてもらえます。


一様に原価率を高く設定しなくとも、一部原価率の高い看板メニューを作ることで、同等の集客を得ているお店も増えています。例えばお寿司屋さんで、ランチに豪勢な海鮮丼が1000円で食べられる!と触れ込みます。原価率も高く、客単価は高くないですが、きちんと美味しければ、一定数の「この味なら夜も来てみようか」につながります。


もう1つ例がありまして、お寿司屋さんでネタごとに違う原価率を設定し、高い原価率を看板メニューとして、他の低い原価率のメニューも食べてもらい、全体で採算が取れるようにしているお店もあります。原価率が高いのはイメージ通り高級なネタで、うにやマグロなどです。寿司屋さんは、普通の回転寿司でも原価率に開きがありますが、より顕著にすることで集客性を上げています。中には原価率100%を超えているものまであります。居酒屋でも原価率に開きがあるところが多いですね。ただしやり方は結構難しいと聞きます。下手にばらつきがあると、イベントや季節、客層によって大打撃を受けることもありますので、かなり考えてメニューを組む必要があります。お寿司屋さんでは、脂が多いものやこってりしたもの、つまりあまり多く食べなくてもいいものが、自然と高い原価率になっているのが、この傾向に拍車をかけていると考えられます。


まとめると、回転率ををお客さんが感じないように上手に上げて、コスパの良さを武器にリピーターになってもらうことが、薄利多売を実現することにつながります。そしてコスパの良さは、リピーターだけでなく、話題性にも富み、新規のお客さんの獲得にもつながります。いまはSNSが普及しているので、すぐみんなの目に触れます。で、来てもらって、リピーターになってもらうと。評判の良さとリピーターによる集客と、回転率の良さが、高い原価率を実現しています。


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回転率による従業員へのしわ寄せ


回転率が高いと、それだけ従業員の仕事は熾烈を極めます。かといって闇雲に従業員を増やすと、人件費がかさみますし、連携がうまく取れなくなります。人件費は抑えるのではなく、最適化する。これが鉄則なのですが、高い回転率では最適化したところで、従業員の負担は比較的大きくなります。


最適なオペレーション、サービスを提供するために、原価率を高く設定するのと同時に、従業員の仕事量・連携についても考え、どこまで手動にするのか、どこから自動にするのかなど、システムの最適化も必要となります。そして随時見直しと改善を繰り返し、高い士気を持って従事してもらわなければ、薄利多売は実現しません。


一方で、飲食店に限らずですが、経営において従業員は二の次という企業が多いのも事実です。高い原価率を設定して、一定の利益をあげているところは、比較的考えられてはいますが、お店によっては無茶なワンオペレーションなどがみられます。かなしいかな「代わりはいくらでもいる」で、ちゃんと利益は出る社会です。このへんについては主旨ともずれるので、また別の機会に掘り下げて記すつもりです。従業員満足のコンサルは、需要がないとか誰かがボヤいてたりボヤいてなかったりするのを、聞いたとか聞いてないとか(笑)。経営第一となるのは当然かもしれませんが、従業員へのしわ寄せがその礎となるのは、嘆かわしいことですね。


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さいごに


飲食店と原価率に関する、ちょっとした小話でした。依然として30%前後に設定しているお店も多いですが、その中でも確かにある傾向について、浅い部分ですがどういう構造になっているかを記しました。コラム的な感じで、見ていただけていたら幸いです。他の業界の原価率はどんな感じになっているんでしょうか。気になるところです。



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