こんにちは、嵜山拓史(さきやまひろし)(@sakihirocl)です。今回は米粉の吸水率の比較や菓子・料理用、パン用について書いていこうと思います。
世の米粉のレシピに対して「レシピ通り作ったけど全然違うものが出来た」「レシピと生地の状態が違う」「どうやっても米粉パンが全然成功しない…」といった声をよく聞きます。
うちの米粉レシピはすべてお菓子なので影響は受けづらいですが、パンやシビアな配合の場合は前提条件が大切なのでその辺をまとめていきます。
米粉の用途別基準・用途表記(菓子・料理用、パン用)
パッケージに番号と用途が書いてある米粉を見たことありますでしょうか?
こんな感じで、兼用のものもあります。
これは製法やメーカーによって米粉に違いが出る中、小麦粉のように薄力粉や強力粉などの表記がないと分かりづらいということで実施されている取り組みです。
区分は主にアミロース含量によるもので、要はアミロースが少ないほうが軽く仕上がるのでグルテンの少ない薄力粉のように使い、アミロースが多い場合は強力粉のように使うのが向くということ。
詳しくは農林水産省の「米粉の情報」のページを見ると色々まとめられています。
ただしこの用途表記はすべての米粉に表記されているものではなく、さらに厄介なのは「お菓子用」と書いてあっても吸水率が全然違う場合があること。
米粉の性質は
1. 粒度
2. 損傷でんぷんの割合、でんぷんの差
3. アミロース含有量
(4. 味の違いもある)
で違ってきます。でも現在の区分は、これらを包括的に分類したものではないように感じられます。
米粉の吸水率の比較
ぱっと手に入る米粉を片っ端から買って、同量の水と合わせて吸水率がどのくらい違うか比較してみました。
先に結果をまとめたものが↓(カッコ内は用途の表記です/番号がないものは↑の区分ではなくパッケージの文章)
共立食品 (お菓子作りやお料理に)
幸田商店 薄力米粉 (お菓子・料理に) 共立食品とほぼ同じ
富澤商店 (ミズホジカラ製菓用米粉) 共立食品とほぼ同じ
もへじ (ホームベーカリー用)
波里 (2番 パン用) もへじホームベーカリー用とほぼ同じ
もへじ (パンやお菓子に)
波里 (1番 菓子・料理用) もへじとほぼ同じ
みたけ (1番2番兼用)
↓固い
※同じ銘柄でも原料や製法のブレで同じ結果にならない場合が考えられます。
↑これ、まわりに固まってるのも下にたまっている液状のものも、同じく米粉と水を1:1で合わせたものなんです。こんなに違いが出る…。
粒度があるので単純に吸水率では比較できないので、柔らかい(サラサラ・液状)~とろみのある状態~固い(まとまる・固形寄り)で比べていきます。
柔らかい(サラサラ・液体)
米粉10g・水10gを混ぜた時にサラサラ、液状になった米粉。
・共立食品 (お菓子作りやお料理に)
Amazonやヨドバシで検索上位に出てくる米粉。お菓子作りやお料理にという表記でサラサラになりました。
・幸田商店 薄力米粉 (お菓子・料理に)
薄力米粉という表記。共立食品よりはかためだけどほぼ同じサラサラ具合。
・富澤商店 (ミズホジカラ製菓用米粉)
製菓用米粉という表記。幸田商店 薄力米粉と同じく共立食品よりはかためだけどほぼ同じサラサラ具合。
とろみのある状態
米粉10g・水10gを混ぜた時にサラサラでもなく固形寄りでもなくどろどろになった米粉。
・もへじ (ホームベーカリー用)
もへじのホームベーカリー用米粉でトレハロース、増粘剤が添加されたミックス粉。とろみのある状態。
・波里 (2番 パン用)
同じくトレハロース、増粘剤が添加されたパン用のミックス粉。もへじのホームベーカリー用よりは若干かたいがほぼ同じ。
固い(まとまる・固形寄り)
米粉10g・水10gを混ぜた時にまとまって固形寄りになった米粉。
・もへじ (パンやお菓子に)
ホームベーカリーでないもへじの米粉。パンやお菓子にの表記。液体感がなくなって成形が出来るくらいのかたさに。
・波里 (1番 菓子・料理用)
定番の波里の1番、菓子・料理用の米粉。↑のもへじとほぼ同じかたさ。このように菓子・料理用であってもサラサラなのもあるし、このくらいかたいのもあると…。
・みたけ (1番2番 菓子・料理、パン兼用)
みたけの菓子・料理、パン兼用の米粉。一番かたくがっつりまとまります。
このように、同じ1:1なのに天と地ほどの差があります。
吸水率の差は実際どのくらい影響出る?お菓子とパンで比較
お菓子では意外に違いは小さく
これだけ吸水率に差があれば、レシピ通りに作っても米粉によって影響がでそう。
ということで同レシピで米粉だけ変えて比較してみました。
一番サラサラだった共立食品の米粉と、一番固かったみたけの米粉での比較。ちなみに米粉95g・ココアパウダー5gに対してバター30g・牛乳or豆乳45gという水分量。
意外と両者同じような焼き上がりで、食感の違いもほぼなく。強いて言えばかたかったみたけの方が詰まった焼き上がりになりました。
あれほど吸水率に差があったのに、仕上がりがめちゃくちゃ違うということはなかったです。
こちらも一番サラサラだった共立食品の米粉(チョコシフォン)と、一番固かったみたけの米粉(プレーンシフォン)での比較。配合は基本同じ。
みたけの方(プレーンシフォン)が若干しっかりしているだけで、ほぼ変わらず。
米粉パンは違いがかなり出る
続いて米粉パンでの比較。小麦グルテンや増粘剤を添加しない純粋な米粉パン、生地は液状になるタイプです。同レシピで比較したところ、こちらはしっかりと差が出ました。←左が一番固かったみたけの米粉、右→が一番サラサラだった共立食品の米粉。
みたけの方はあまり膨らまず、ずっしりねっちょりした食感になってしまいました。
生地のキメを見比べても一目瞭然ですね。お菓子ではそれほど差は出なかったですが、パンではかなり顕著に差がでました。
お菓子の方も、水分量と油脂量によっては影響が出る可能性もあります。その場合は同じく、サラサラだった方は軽く仕上がり、かたかった方はもっちり重めの仕上がりになります。
米粉レシピを作る際の注意点・意識することまとめ
米粉の特徴として、
・米粉の用途別基準・用途表記があってお菓子・料理用とかパン用という区分がある
・米粉の吸水率にはかなり差があり用途表記で判断出来るわけではない
・米粉の違いによる影響は、お菓子では小さいけど(配合次第で顕著に)、パンではかなり大きい
ということをお送りしてきました。
これらを受けて米粉レシピを作る際に意識すると良いことをまとめると、
・基本はお菓子用やパン用など区分にならう
・具体的に使った米粉が書かれていれば同じ米粉を使う
・失敗した場合は吸水率の違う米粉で試してみる
ちなみにグルテンフリーで米粉100%のパンのレシピを参考にする際、生地が完全な固形になっているレシピはパンの体をなしていない可能性が高いです。作ってもボソボソで固いパンのようなものが出来上がる場合が多いと思います。
とろとろで液状のレシピは美味しい可能性が高く、その場合は今回でいう水と米粉を1:1で合わせた時にサラサラになる米粉を使うのがおすすめです!
ということで、米粉の吸水率の比較、菓子・料理用、パン用など、米粉の特徴やお菓子作り・パン作りでの活用についてお送りしました。米粉のレシピを作る際の、参考になれば幸いです!