こんにちは、生かし屋(@sakihirocl)です。2017年11月2日(木)~9日(木)に西武池袋本店・別館2階西武ギャラリーで開催されている、画業20周年記念 志村貴子原画展に行ってきました。時間は午前10時~午後9時で、入場料は一般800円/大学生・高校生600円/中学生300円(小学生以下無料)です。
平日の昼間、開場してまもなくにいったのですがすでに10人以上いました。男女比は男:女=1:9以上。ブログへの掲載は控えますが、メインビジュアル作成の映像以外は写真撮影OKとのことでした。
志村貴子さんの作品はすべて持っていますし、何回も読み返しています。でも、こんなにまじまじと近くで絵を眺めるのは意外とはじめて。何回も見た表紙の1枚も、あらためた見ると気づきがあります。
志村貴子さんといえば淡い色使いの水彩画が印象的です。美しく繊細なタッチで、心をつかまれます。ふつうにみても魅力的な絵だと思っていたのに、大きな絵で顔を近づけてみてみてると「ああ、こんな表現もあったんだ」と目を丸くします。
たとえば2人が書かれた絵で、全部澄んだ淡いタッチだと思っていたのが、葛藤を抱えている方にしれっとくすんだ色が混じっていたり。青で書かれた子と緑で書かれた子が並んでいる絵で、ふたりのスカートがかぶっている部分で2色が混じっていたり、足の色が入れ替わっていたり。色使いだけでなく線の書き方などにも、細かい表現がところどころに散りばめられています。
また、こう作品を並べてみてみるとキャラクターの個性と表情の豊かさが際立ちます。志村貴子さんは線が多い方ではありませんが、キャラクターのかき分けはばっちりで、どのキャラからも複雑な感情が伝わってきます。ほんとにすごい。シンプルだからこそぱっと伝わるけど、伝わる感情は決して簡素なものではありません。
▲原画展で買った原画展のビジュアルブックと、志村貴子総特集の雑誌ユリイカ。ほかにもグッズもろもろで1万くらい散財してる。そしてランダム封入の缶バッチなどで、目当てのものがでたことないのが僕の性分。
せっかくなので志村貴子さんの作品を知らない人、1作品しか知らない人へ向けての紹介と、自分がうけた影響なんかを少し語ってみようかと思います。
志村貴子さんの作品を知ったのは"ガール・ミーツ・ガール"を描いた『青い花』。要は少女の同性愛が題材となっています。そのあとに読んだのが、1番好きなの『敷居の住人』。こちらは思春期の少年少女たちの心情・葛藤を描いた物語。敷居の住人は評価が別れる作品ですが、当時思春期真っ只中の僕のこころを打ち抜きました。読んでるうちにどんどんのめり込んで、流れ込んでくる感情に共感でもした日にはうちのめされます。ズバンと心を打ち抜かれるのがここちよくって、何度も読み返しました。
そしてもっとも印象的なのは『放浪息子』。女の子になりたい男の子と、男の子になりたい女の子。そのまわりの人も含め複雑な心情が入り交じる群像劇です。小学生~大人になるまで、十年以上に渡って描かれています。ただの思春期の悩み・感情の起伏ではなく、「大人になる・成長する」から生まれる悩みと決意が丁寧に描かれている傑作です。
面白いのが、僕が今髪を伸ばしてメイクをしているところ(笑)。恋愛対象こそ異性に限りますが、思えば放浪息子をはじめ志村貴子さんの作品を読んだときに何かが芽生えていたのかもしれません。なにしろ影響されやすい性分ですから。敷居の住人をよんで「いつかは髪を緑色に染めたい!そしてミドリくんと呼ばれたい!」と言っていた人ですから。(そしてもまだ心の片隅に野望として残っている。)
近年発表された作品も、もれなく素晴らしい作品です。こいいじ。淡島百景。娘の家出。思春期・ジェンダーをはじめ、"表現"という表現をためらってしまうくらい、登場人物から感情が伝わってきます。でもそれも、全部じゃないんだろうな、人によって受け取り方も違うんだろうな、1年もしたら僕も違う受け取り方をしてるんだろうな、と思いながら読んでいます。そして実際、読み返すとやっぱりちょっとずつ違うんです。
志村貴子さんの作品から受け取った感情は、まちがいなく僕の一部を構成しています。死ぬまで読みたいし、読んでいるだろうなと思います。今回の原画展で、また宝物が増えました。