自炊をはじめる人へ!基本的な包丁の使い方~猫の手の本当の意味~



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4月ということで、これから自炊を続けていくぞ!と意気込む人も多いんじゃないでしょうか。そこで、基本的な包丁の使い方を書いていこうと思います。よく猫の手っていいますけど、猫の手だけじゃダメなんです。

一応プロなので、こだわりを織り交ぜると長々と語りだす生き物になりますから、本当に初心者の方に向けてシンプルに!また、いつまで経っても速く切ることが出来ない、どうしても怪我をしてしまうという方にも、役に立つ情報が書ければと思います。

少し長いので、目次で読みたい場所まで飛ばしてくださいね。


基本的な包丁の使い方


さっそく包丁の使い方を記していきます。実に奥深い世界ですが、初歩のみ記そうと思います。初歩といっても、ここだけ押さえておけば普通に料理が可能です。あとは慣れていきますので、トライあるのみです。


右利きで話を進めていますので、左利きの方は逆で考えてくださいね。世知辛いものです。


基本的な動作:押すか引くか


包丁を使う時の姿勢は、まな板の前に真っ直ぐ立ち、包丁を握る方の手側の足(右利きなら右足)をやや後ろに引いてやるといいです。上から見て、包丁はまな板の長辺と90°になるようにかまえます。また刃とまな板が垂直になるように扱っていきます。


包丁を切る対象に向かってふり下ろす際ですが、垂直に下ろすのではありません。包丁は「押す」か「引く」かしないとうまく切れません


押しつぶすように切ってしまうと、うまく切れないうえに素材の断面を傷つけてしまい、食感や美味しさが損なわれてしまいます。

また表面積が大きくなるため、鮮度が落ちるのも早くなります。試しに大葉やバジルあたりをスッと押して切ったものと、押しつぶすように垂直に切ったものを比較してみてください。後者のほうが早くしなびるはずです。


猫の手+左手が重要!


包丁を扱う上で、重要なのが左手です。普段のカットにおいて、どう切るかは左手が決めていると言っても過言ではありません。包丁を扱う際の注意点というか基本姿勢のひとつとして、おそらく「猫の手」というのを聞いたことがあると思います。みなさんこぞって手を丸めて切っているのですが、残念ながらこれでは不十分です。


猫の手+αでやらなければならないのは、刃の側面と左手の中指または人差し指の第一関節を離さずに作業する、ということです。よくねこの手だけして切っている様子を動画などでも見ますが、危なっかしくてひやひやします。


わかりずらいですが、ちょっとたまねぎをカットする動画を見てみてください。



たまねぎカット(ブログ用)


なぜか緊張してぎこちないのとちょっと震えていますが(笑)。このように、左手と包丁は離さずに切っていきます。ねこの手にしても、包丁と手を離して切っている方も多いのではないでしょうか。これではねこの手の意味がなくて非常に危険ですし、いつまで経っても一定以上速くなりません。


なぜ刃につけて切るかというと、「切る場所は刃ではなく手で決めたほうが意図したところを切りやすく、刃と手が付いている以上、接している第一関節より刃先が上にあがらなければ決して指を切ることがない」からです。前後に分けて見ていきましょう。


どこを切るかは左手が決める


例えば片手で包丁を握ったとして、10cm・・いや5cm上から振り下ろした場合でも、思った通りのところに包丁を正確に落とすのは容易ではありません。ミリ単位の話ですよ~。やってみてください。毎回思ったところにミリ単位で正確に振り下ろすのは難しいはずです。しかも連続で、少しずつずらしていくともなれば至難の業です。もしできるなら、あなたが現代の佐々木小次郎です。


対して左手をまな板に置き、1ミリほどずらすのはどうでしょう。誰でもできますよね。つまり包丁を握っている右手で切る位置を決めるより、包丁に接している左手で切る位置を決めたほうが、正確で安全なのです。


その際に、他の指が第一関節よりも刃のほうにでてしまうと切れちゃいますよね。だからこそのねこの手なのです。猫の手は刃につけてこそ意味を成すのです。


左手を上手く使うと、手を切ることがなくなる


次に後者の上下の話をしていきましょう。左手を刃に付けた状態で、刃を上下させてみてください。いくら包丁を動かしたとて、刃先が第一関節よりも上に上がらないかぎり絶対に他の指は切れないはずです。


ここの感覚ばかりは慣れですので、どのくらいの力加減なら刃先が第一関節より上がらないのか、経験でつかんでいってください。なのではじめは怪我をしないようにゆっくりと、感覚がわかってくると、徐々に速くなっていきますので決して焦らず、慢心せず、安全第一で上達していきましょう。



まとめると、ねこの手をして第一関節を刃に付けた状態で、刃先が第一関節よりも上がらなければけがをすることはありません。日常的なスライスなら、上記を満たしていれば目を瞑って切ったとしても絶対にけがはしません(けど真似はしないでくださいね)。包丁を扱う際は猫の手+左手が必要だという話でした!


怪我を防ぐために~食材の置き方~


前の項目で述べたことを守っていると、不意な事故や不注意がないかぎり怪我はしませんが、食材の形は多様なので、もう2つほど気をつけておくべきポイントがあります。それは食材の安定包丁の滑る向きです。


食材の安定


食材を切る際、食材自体が不安定でぐらぐらすると、あらぬ方向に包丁が落ちて、怪我につながります


例えば人参を縦に切る際、そのまま縦に切ろうとするところころ転がって安定しませんよね。ですのでまず横に1/3~半分にカットして、立てて安定させた状態で縦に切るというように、段階を踏みます。

1/4カットのかぼちゃを切る際も、常にぐらぐらせずに安定するように、切っている途中でも置き方を変えるなどする必要があります。


堅い食材だと特に、勢いで包丁が意図しないところに向かっていってしまいますので、食材の安定を意識する必要があります。


食材は動かない状態で切る。これ絶対です。


切り終わりは自ずと安定性が悪くなるので、それまで速く切っていてもゆっくり切るようにするのもお忘れなく。


包丁の滑る向き


先程のたまねぎをカットする動画を見ていただくと、途中でたまねぎを倒している様子がうかがえると思います。


玉ねぎは半円状になっています。そこに上から包丁を下ろしていくわけですが、もしも刃が入らなかった場合、包丁は円に沿って滑ることになります。


玉ねぎを切る時、すべる向きに手がないと手を切らない


もしその先に指があると・・・。


玉ねぎを切る時、すべる向きに手があると手を切る


怪我につながります。包丁を使いはじめて間もないころは、包丁を90°に下ろせていなかったり、切れ味が悪かったりして滑りやすいので、包丁の滑る向きを特に意識しておくと、怪我の機会がぐっと減ります。


先程の動画のように、玉ねぎを切る際の包丁の滑る向きが、半分切ったところで逆になり、左手の方に滑るようになるので、倒して滑ったとしても何もないところに落ちるように向きを変えます。このように、どの食材に対しても自然と滑る向きを考えて食材の置き方をかえると、怪我しにくくなりますので、ぜひ意識してみてください。


切れ味と安全性


包丁による怪我では、単なる不注意の他に、「切ろうと思ったけれど、切れなかった」という理由も多く見られます。切れなかった結果、あらぬところに刃が落ちて、そこに指などがあった場合は、切れてしまいます。ちゃんと切ろうと思ったものが切れてくれるように、ある程度の切れ味を保つ必要があります。


具体的にどのくらいの切れ味があればいいのかですが、目安はトマトがすっと切れるくらいです。トマトは皮が切れにくく、怪我の原因になりやすい野菜のひとつでもあります。そのトマトに刃が入るくらいであれば、問題なく作業できます。

他にはコピー用紙を切ってみるのも、確認方法のひとつです。コピー用紙を手に持って、斜めに刃を入れてみてください。切れない包丁だと、まず紙がしなって刃が入りません。すっと紙が切れるくらいであれば、問題なく使えます。



紙で包丁の切れ味チェック(ブログ用)


もっと本気で料理をするのであれば、力を入れずに包丁の重みだけで野菜が切れるくらいまで研いであげると、作業がはかどります。参考までに、こんな感じで固定せずに野菜を向こうが透けるくらい薄切りにできたりします。



じゃがいもの薄切り(ブログ用)


切れない包丁は本当に危ないので、普段料理をするならある程度の切れ味は保っておきましょう。お手軽に、シャープナーでもしないよりは全然マシです。


包丁の選び方


まずは包丁の選び方からです。家庭用包丁を選ぶ時のポイントはこんな感じです。

  1. 扱いやすい(重さ+長さ+形)
  2. そこそこの性能+高くない値段


業務用では「牛刀」と呼ばれる種類の包丁をよく使います。確かに作業性もよくてかっこいいですが、家庭ではスペースが限られているため、あまり長い包丁は使いづらいうえに、扱いも初心者には難しくなっています。かっこいいから牛刀!と考えている方には、「やめておいたほうがいいよ~」と思います。


じゃあどんな包丁がいいかというと、ペティナイフか三徳包丁です。基本的には三徳包丁ですね。刃渡りは16~18cmの一般的なものを選ぶといいと思います。女性は特に短めで、重くないものがいいですね。本当にちょこっと簡単なものしか料理しない+作業性の良い小回りの効く包丁が欲しい場合は、ペティナイフを買うといいです。

ただしペティナイフはかぼちゃなど堅いものを切るのには向いていないので、メインに三徳包丁を持っておいて、普段の料理をお手軽にしたいならペティも持っておいていいかもという感じです。


食洗機を使用する場合は、対応のものを選ぶ必要があります。だいたい対応してますけどね~。あとは衛生的かどうかですが、これもメーカーものなら心配はいりません。ハンドルが加工なしの木でもないかぎりは大丈夫です。


そこそこの性能+高くない値段ですが、今は有名メーカーで2000~3000円程の包丁でも、家庭で使うには差し支えない性能を有していますから、例えば下村工業 ヴェルダンや貝印 関孫六など、Amazonで上位に表示されるものから選んでも全然大丈夫です。



要はレビューなどを参考に、100円ショップなど極端に安いものでなければ大丈夫だということです。もうワンランクアップするなら、藤次郎がおすすめです。こちらは5000円台。



あ、ちなみにですが上の3つだと僕自身は藤次郎しか使ったことないです。なのでおすすめといっても僕の経験をもとにはしていませんのであしからず。ですが材質や価格帯からかなり予想はつきます。


包丁というのは、買ってすぐはどれもよく切れます。だんだん切れ味が落ちてくるんですよね。切れ味が落ちると危ないので、ある程度の切れ味は保持する必要があります。切れ味を語るのに重要なのが材質なのですが、かなり専門的になるのでここでは割愛します。多くは値段相応なので家庭では、安いほど切れ味が落ちやすい、という認識でいいと思います。つまりはじめは切れるけれど段々切れなくなっていき、そのスピードが藤次郎と比べて上の2つは早い、ということになります。


切れ味を取り戻すには、包丁を研がなくてはなりません。たとえ家庭であっても、これは必須になります。切れないまま包丁を使い続けると、確実に怪我につながります。でも砥石は難しそうだし・・・という方は、シャープナーでもいいと思います。次の項目で少し掘り下げます。


ここまで読んで、それでもどうしても牛刀が使いたい!という方は、18cmの牛刀なら家庭でも容易に扱えます。僕も家では、18cmの牛刀と13cmのペティを使用しています。


僕が持っている包丁


ダマスカスは完全に飾りです(笑)。V金10号など、切れ味がいいと聞いたことがあるかもしれませんが、研ぎにくいので家庭ではあまりおすすめできません。研ぎやすさも扱いやすさですね。その点でも、藤次郎の包丁は総合的に優れています(まわしものじゃないよ)。


砥石とシャープナー


刃物のことを考えるなら、使うべきは絶対に砥石です。僕もシャープナーはつかいません。おすすめの砥石ですが、家庭では中砥石さえあれば十分なので、シャプトンの#1000か貝印のコンビ砥石のうち1つがあればもう大丈夫です。



研ぎ方はYouTubeなどでみてもらうのが分かりやすいと思います。角度がわからないという方は庖丁とぎ角度固定ホルダーもあります。



また研いでいると、よく包丁が当たる部分がへこんできますので、目が粗い砥石や修正砥石で修正してやる必要があります(本当は毎回修正します)。上のシャプトンなんかはへたりにくいのでおすすめです。


そこまで真剣に料理をしない、刃物に興味もないという方は、シャープナーでもいいと思います。なにを重要視するかは人それぞれですからね。手軽さならシャープナーです。



ですが良い包丁を買ったなら、シャープナーは使わないほうがいいと思います。ちゃんと研ぐのと、全然違いますからね~。


また自分で研いでもなかなか良い刃がつかない場合は、半年~1年に1度メンテナンスに出して、プロに研いでもらうのも選択肢のひとつです。自分でうまく研げる場合も、数年に1度くらいはメンテナンスに出すと安心です。切れ味だけでなく、ゆがみともありますからね~。



正しい包丁の使い方を覚えて、安全な自炊ライフを


包丁はすぐには上達しません。日々の積み重ねで徐々に慣れていくものですから、はじめはゆっくりと作業することが大切です。練習あるのみです。速く切るのがかっこいいのはわかりますけどね。それで怪我をしてしまったら、元も子もありません。


基本的な包丁の使い方を、怪我をしないようにを主軸に、簡単ではありますが記したつもりです。これから自炊をはじめる人へ、何か参考になれば幸いです。わからないことがあれば質問していただければ追記しますので、何かあれば連絡ください!それでは、良き自炊ライフを!