一瞬の風になれ


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特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
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青春の真っ只中で読んだ本、何冊も浮かぶのですが一冊選ぶとすればこの本になります。



主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。(Amazon消費説明より)


森絵都さん著の「DIVE!!」とかなり迷ったのですが。佐藤多佳子さん著、一瞬の風になれ。


主人公もまさに青春真っ只中の陸上を題材とした青春スポーツ小説。


この本を手に取るきっかけは、いわゆるタイトル買いでした。内容はつゆ知らず、スタイリッシュなタイトルに惹かれて、僕はこの本に吸い寄せられました。


おそらく当時は中学生でした。はじめ単行本で「一瞬の風になれ」の第一部が出版されたのは2006年8月のこと。第二部と続いて、第三部が出版されたのが同年の10月でした。僕がこの本と出会った頃には既に第三部まで揃っていたので、それ以降。


加えて、自室の部屋の隅にある本棚のすぐそばで、バランスボールに座りながら、本棚においてあったCDコンポで音楽を聴きながら読んでいたことを覚えています。その時に流れていたアルバムが、UVERworldさんの「BUGRIGHT」と大塚愛さんの「愛 am BEST」だったので、2007年の春頃だったのではないかと思います。


内容はというと、実にタイトル買いに起因する期待以上でした。特に試合の描写が素晴らしく、ありがちな感想ではありますが、本当に走っているような感覚に駆られます。風を感じるような疾走感、スピード感、臨場感に躍動感。文字通り、「手に汗握りながら」読んでいる時の、この動機や体の熱ささえも、登場人物とシンクロしているかのような。


また、心情描写にも引き込まれます。青春についてくるおまけのような葛藤、悶々とした苦悩。自分と重ね合わせてしばらく放心することもしばしば。しかし読み進めていくうちに、そんな逡巡も、風になって振りきれるような、読了後はどこか向上心に満たされている小本です。


小説を読む際に、勝手に脳内で登場人物が動き、話して、映像のように捉えられることがあるのですが、本書はそのイメージがくっきりと残っています。また、まるで劇場アニメを見たかのようなその風景は、前述のアルバムに入っている曲がトリガーになって、年月が経った今でも色褪せることなく想起されます。


この良い意味でのフラッシュバックに伴って、その時に嗅いだ匂いや、感情などあの頃の欠片が一気に流れ込んできます。これが好きで、僕は読書をするときに必要以上に周りの匂いを嗅いだり、本を読むのを中断して感情に浸ったりします。


僕は本は何度でも読み返すべきだと思っています。なぜかというと、昨日の自分と今日の自分は価値観がたしかに違っていて、それが何年にも積み重なると、その本から得られるものや抱く感情が全く違っているからです。何度読んでも、新しい発見があり、そこから新たな思考が広がっていきます。


でもそれは決して孤立しているものではなく、確かに繋がっているものだと考えています。あの頃の自分はこういう風に感じていたけれど、今の自分はこんな風に感じているよ、と。あの頃があるから今がある、成長もするし、変わらないものもある。


青春の一冊、でもそれ自体が、青春を切り取った1ページで、僕はまだその本の途中なんだとか臭いことも考えながら、今日も僕は青春の一冊を読むのです。好きな音楽を聴きながら。良い香りのコーヒーを飲みながら。