こんにちは、嵜山拓史(さきやまひろし)(@sakihirocl)です。世には数多カルボナーラのレシピがありますが、この記事ではしっかりポイントを押さえて美味しいカルボナーラを作りたい!という方にむけて記そうと思います。料理をしない人でも、カルボナーラの豆知識的な感じで読んでもらえればと思います。カルボナーラのレシピ記事や動画は何かと物議を醸すものが多いですが、多様性を認めつつも要所で説明しながら僕の方針を示せたらと思います。カルボナーラ警察さんもよってらっしゃいみてらっしゃいってことで、動画も撮りましたのでぜひご覧くださいな。
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詳しいカルボナーラの作り方に関して、はてな界隈では1年ほど前にこんな記事が話題になりました。
こちらもよく書かれています。同じカルボナーラなので基本的な流れは同じですが、主張が違っている部分も多少はあります。そこは料理人の個性ということで、プロの現場でも千差万別なのでご愛嬌。参考にしながらも自分で試して掴んでいくのが良いと思います。同じように長々と説明していきますが、実際はシンプルな料理なのでお気軽に作っていただければと思います。長いので読みたい場所に飛んでね。
材料・作り方・ポイント
レシピと作り方だけ読んでさっと作りたいんじゃーって方のために、先に材料・作り方・ポイントをまとめておきます。
・卵黄 2個
・パルミジャーノ・レッジャーノorペコリーノ・ロマーノ ひとつかみ程度
・オリーブオイル 小さじ1~2
・パンチェッタorグアンチャーレ 30g前後
・茹で汁 適量
・粗く挽いたブラックペッパー 適量
・パルミジャーノ・レッジャーノorペコリーノ・ロマーノ たっぷり
2. じっくりと旨みを含んだ脂を出すように炒める
3. たっぷりの沸騰したお湯に塩を1パーセント弱ほど加え、パスタを茹でる
4. ボウルなどで卵黄を溶き、パルミジャーノ・レッジャーノをひとつかみほどすりおろして混ぜる
5. 胡椒のピリッと感をより出したい場合は粗く挽いた黒こしょうも混ぜ、使うまでラップをして置いておく
6. パンチェッタから脂が出て、表面が多少カリッとしたら茹で汁を大さじ1~2ほど加え、軽く揺すって煮たあと火を消しておく
7. パスタは表示時間の1分前程度、断面にほんのり芯が残るアルデンテの直前であげる
8. 茹で上がったパスタをフライパンに加えて和える
9. フランパンが冷めてしまっている場合のみ温める程度で火にかける
10. 卵黄が固まってしまわずにとろっとし、チーズが溶ける65℃程度に仕上げるために、フライパンの温度が70℃強~75℃の状態で先程の卵黄+チーズを加えて素早く混ぜ合わせる
11. 濃度が濃すぎる場合は茹で汁で調整し、程よい濃度に仕上がる
12. お皿に盛って粗く挽いた黒こしょうとパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりとかける
13. 冷めるとチーズがかたまってテクスチャが悪くなるので温かいうちにお召し上がりください
- パンチェッタは弱火でじっくり脂を引き出す(炒めすぎはNG、脂が多い場合はいくらか拭き取る)
- 卵黄と卵黄より少し多めのチーズをあわせる
- パスタは塩分濃度1パーセントで茹でる
- パンチェッタを茹で汁で少し煮て旨みと塩分を溶かし、アルデンテのパスタと和える
- 熱い状態で卵液とパスタを合わせるのはボソボソになるのでNG
- 70℃強~75℃で合わせ、茹で汁で濃度を調整してチーズは溶けて卵がとろっとする65℃程度に仕上げる
- 卵液を入れてからは一部が固まってしまわないように素早く混ぜる
- 温度が下がった状態で和える場合は弱火にかける→はずすを繰り返してゆっくりと火を入れる
- お皿を温めておく
- 冷めるとチーズがかたまるので温かいうちに食べる
詳しい材料の説明
・卵黄 2個
・パルミジャーノ・レッジャーノorペコリーノ・ロマーノ ひとつかみ程度
・オリーブオイル 小さじ1~2
・パンチェッタorグアンチャーレ 30g前後
・茹で汁 適量
・粗く挽いたブラックペッパー 適量
・パルミジャーノ・レッジャーノorペコリーノ・ロマーノ たっぷり
さて一つずつ説明していきます。
まず使うパスタの種類ですが、カルボナーラは重いソースになりますので普通~太めのパスタをお使いください。1.6mm~のスパゲッティーニ、リングイネ、タリアテッレ、フェットゥチーネなどですね。今回はスパゲッティーニを使うのですが、パスタはダイスの種類によってブロンズダイスとテフロンダイスという分類があります。ダイスとはパスタを押し出すときの穴で、昔ながらのブロンズダイス(ルヴィダ)は摩擦によって溝が生じ、表面がざらざらしています。ディ・チェコが代表ですね。表面がざらざらしているのでソースとの絡みが良いのが特徴です。対してテフロンダイス(リシャ)はその名の通り摩擦が少なく、なめらかな表面をしています。ソースの絡みはブロンズダイスより控えめで、構造がしっかりしているためアルデンテの時間が長い特徴があります。バリラが代表ですね。カルボナーラは重いソースですので、スパゲッティーニの細さであればソースが程よく絡むテフロンダイスのパスタを使用するのをおすすめします。バリラを使ってくださいってことです(笑)。
全卵か卵黄かという話ですが、基本的に旨味が強い卵黄を使います。凝固温度が違う卵白が入ってくることで扱いづらくなりますし、チーズと対等に渡り合うために卵黄のみ使うのをおすすめします。多少さっぱりになる全卵+卵黄という選択肢もありますが、あまりメリットが見いだせません。
よく物議を醸す生クリームを使うか使わないか問題。源流主義で生クリームを絶対悪かのように扱う、いわゆる「カルボナーラ警察」のような人たちがいますが、多くは料理人ですらないと見受けれらます。本場ローマのカルボナーラが生クリームを使わないというだけで、生クリームを加えるのは「邪道」ではなく「工夫」ですのでお間違えないよう。生クリームは卵の凝固を緩やかにするためと、生クリーム自体の味をプラスするのが目的です。今回は僕の好みで使いませんが、日本のレストランでは生クリームを使っている場合が多いので、馴染みの味になると思いますし、扱いやすくなるので初心者の方は生クリームを加えて作るのが良いと思います。ただし生クリームを熱すると重くなりがちなので、生クリーム+牛乳にするのがおすすめです。
オイルの種類は加熱後にもアイデンティティが光るオイル以外であれば、あまりこだわらなくてOKです。オリーブオイル、サラダ油、太白胡麻油、グレープシードオイルあたりが筆頭でしょうか。ただしオイルは少量しかつかわないので、あえて香りが残るごま油なども"あり"だと個人的に思っています。
使うチーズの種類はパルミジャーノ・レッジャーノまたはペコリーノ・ロマーノになります。基本的にはパルミジャーノで、ヒツジの乳から作った独特の風味が好きな方はペコリーノをお使いください。ブレンドしてもグッドです。安価ですが熟成期間が短いグラナ・パダーノをわざわざ使う必要はあまり感じません。塩分濃度が低いので多く加えることになり、テクスチャも違ってきます。今回は本気で作る人のためのカルボナーラのレシピですので、パルメザンチーズなど粉チーズはご遠慮ください。(お気軽に作る場合はいいと思いますが、味は別物です。)
チーズの分量をひとつかみと書いてありますが、正確にはチーズの塩分濃度によります。そのチーズの塩分濃度は千差万別です。パスタには下味がついている点、ソースは塩分濃度1パーセントの茹で汁でのばし、パンチェッタの塩分も出るので1パーセント強になる点、パスタに合わせるので一般的な至適塩分濃度0.8~1パーセントより少し強めが良いなどを総合して考えると、卵液の塩分濃度は1パーセント強が良いと導かれます。一般的にパルミジャーノ・レッジャーノの塩分濃度は2パーセント程度ですので、卵黄1個を18gとし、(チーズの分量×0.021)/(18×2+チーズの分量)=1パーセント強、例えば1.1パーセントとするとだいたい40gとなります。もちろんパンチェッタの塩分濃度やパスタの性質、チーズの種類や個差など様々な要因で適量は変化するので、卵黄2個分より少し多めという認識でひとつかみと記しました。
豚のバラ肉を塩漬けにしたパンチェッタか、豚の頬肉を塩漬けにしたグアンチャーレを使います。グアンチャーレのほうが旨み(コク)は強いですが、脂身も多いのでお好みです。カルボナーラにはこれらのお肉から旨みをパスタに絡める工程がありますが、グアンチャーレなら出た脂をある程度ふき取っておくのが良いと思います。明らかに多く出ている場合をのぞき、パンチェッタではそのまま絡めてしまっていいと思っています。
ベーコンではダメなのか、という問いですが、いいと思います。よくベーコンじゃダメと言われるのは燻製臭が余計だという理由です。ただ(悲しいかな)一般的にで売られているベーコンはさほど燻製の香りはありませんし、日本のレストランではよくベーコンが使われているのでより馴染み深い味になるかと思います。ただ断言しておきますがパンチェッタやグアンチャーレで作ったほうが美味しく仕上がります。なぜならよく売られているベーコンは加工しすぎというか、旨みが劣りますし、テクスチャも少し浮くからです。ただパンチェッタやグアンチャーレは手に入りにくいですし、ベーコンでも十分美味しくできるので、使っても問題ありません。個人的にはにんにくの方が遥かに余計だと思っています。ベーコンを使う場合もかならず厚切りをお使いください。
あと、パンチェッタは衛生知識があれば結構簡単に自作できます!2週間~1ヶ月かかるけど!
さて材料の説明が一通り終わったところで、作り方に移ります。
詳しい作り方・ポイント・コツ
2. じっくりと旨みを含んだ脂を出すように炒める
3. たっぷりの沸騰したお湯に塩を1パーセント弱ほど加え、パスタを茹でる
4. ボウルなどで卵黄を溶き、パルミジャーノ・レッジャーノをひとつかみほどすりおろして混ぜる
5. 胡椒のピリッと感をより出したい場合は粗く挽いた黒こしょうも混ぜ、使うまでラップをして置いておく
それぞれの工程について、詳しく説明していきます。パンチェッタは厚さ5~7mm、長さは4cm程度ですかね。程よく存在感がありながらもパスタに馴染むような大きさにカットします。タリアテッレなどで作る場合はもう少しだけ薄くすることで一体感が生まれます。脂はオイルに溶け出るので少量だけオイルを加えてあげて、炒めるときは弱火でじっくり脂を引き出します。ここで火力が強いと、脂が出る前に表面がカリッと焼きあがってしまうので、気長にやっていきます。あまりにも脂が出ていて、このまま茹で汁も加えてパスタに和えると脂っぽくなっちゃうなという場合は、ペーパーで少しふき取ってあげてください。
塩分濃度は1パーセント弱ほど。ペペロンチーノなど他に旨み成分がなく、茹で汁の塩分だけで仕上げる場合は人によっては3パーセントなど、なめたらしょっぱいと思うくらいので塩分濃度にしますが、カルボナーラは他の材料が旨みたっぷりなのと、チーズにもパンチェッタにも塩分があるためこの濃度です。1パーセント弱の塩分濃度はパスタに下味をつける意味合いと、ソースをのばした時に塩辛くなったり、逆に味が薄まることなく、広いレンジでソースの濃度調整が出来るようにという意味合いもあります。沸騰の具合はボコボコしている状態が良いとか、表面を傷つけないようにぎりぎり沸騰するかしないかくらいが良いとか、料理人によって主張が違いますが、僕は普通に沸騰している状態(度が過ぎてボコボコもしていない状態)で茹でます。テフロンダイスのバリラですしね~。温度が低すぎるとベチャッとするので、ぎりぎりにしても沸騰はしている状態で茹でてください。
卵黄とチーズを合わせたら、乾燥して凝固してしまわないようにラップをして待機です。ここでも胡椒を入れますが、香り成分は揮発性であるため熱を加えると飛んでしまいます。ここで加えた胡椒の作業温度は70℃前後なのでまったく香りが生かされないというわけではありませんが、辛みをプラスする意味合いが大きいという認識で加えます。
7. パスタは表示時間の1分前程度、断面にほんのり芯が残るアルデンテの直前であげる
8. 茹で上がったパスタをフライパンに加えて和える
9. フランパンが冷めてしまっている場合のみ温める程度で火にかける
パンチェッタはカリッとしすぎてもスカスカで食感が悪くなるので、ジューシーさを残した状態で茹で汁を加えます。白ワインを少し加えてもいいです。煮ることで旨みとオイルに溶けない塩分を溶かし、美味しいソースになります。アルミパンや鉄鍋を使う場合は、フライパンについた旨み成分をこそぐのもお忘れなく。味見してしょっぱすぎる場合は水を少し足してあげてください。僕自身はさいごに茹で汁で濃度調整する派ですが、動画より少し多めに茹で汁を加えて流動性を保つことで、うかうかしている間に火が入ってしまうのを防げます。慣れに合わせてどうぞ。
もちろんアルデンテを目指すので、ソースと和える時にばっちりアルデンテになるように、表示時間の1分前くらいであげます。クリームソースやトマトソースに比べて和え時間は短めなので、短めに30秒~1分前くらいでOKです。ただアルデンテの前半でかためになるくらいなら、茹で上げた時にばっちりアルデンテくらいで、ソースと和えて少し柔らかめになるほうがカルボナーラには合います。見極めが難しい場合は芯がちょうどなくなるくらいであげてもいいと思います。茹で汁は使うのでこぼしてしまわなきよう。
茹で汁でのばしたパンチェッタの旨みと和えるわけですが、冷めてしまっている場合のみ火にかけてください。温める程度で、アツアツにする必要はありません。ただ温度が低すぎると乳化しづらいので、適度に温かい状態にしてあげます。ここで完全に乳化する必要はありませんが、あまりにしゃばしゃばもダメです。乳化する気持ちで混ぜながらパスタに味を馴染ませ、結果7割乳化でもOKという感じです。
11. 濃度が濃すぎる場合は茹で汁で調整し、程よい濃度に仕上がる
12. お皿に盛って粗く挽いた黒こしょうとパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりとかける
13. 冷めるとチーズがかたまってテクスチャが悪くなるので温かいうちにお召し上がりください
さてカルボナーラの最難関、卵黄+チーズと合わせる工程です。温度が低すぎるとチーズが溶けませんし、温度が高すぎると卵が凝固してボソボソになってしまいます。なのでフライパンが熱いのは絶対にNGです。これが先程ソースと和える時に加熱しなかった理由です。具体的には65℃強くらいに仕上げるので、混ぜているうちに温度が下がるのを逆算し、70℃強~75℃くらいの温度で卵黄+チーズを加え、かたまらないように素早く混ぜ合わせます。今回は分かりやすいように温度計を使っていますが、普段は使いません。はじめて作って感覚がわからない!という方は温度計でチェックしてみてください。チーズが溶けて卵黄がとろっとしてくると濃度が分かるので、濃い場合は茹で汁で調整してしっかり乳化させます(ここの乳化は難しくありません、混ぜていれば自然に乳化します)。この時にパスタを茹でてから放置していた茹で汁がほどよく冷めているのもポイントですね。ずっと茹でた湯を火にかけたまま放置しておかないように注意してください。あまりフライパンを煽りすぎると、その分温度が下がってしまうので、低空飛行でさっと煽ってくださいね。
この時に温度が低いと、卵黄がとろっとせずにチーズも溶けず、ソーズとも馴染まない状態になります。生クリームを使っている場合は特に流動性が高くなりますね。弱火にかけながら混ぜていってください。温度が上がりすぎないように、時々火からおろしながら、最終的には火からおろして仕上げます。初心者の方は時間はかかりますが、あえて温度が低い状態でソースと和えて卵液を加え、弱火で少しずつ加熱していくことで、卵液を加えて即ボソボソに!という失敗を防ぐことができます。少しずつです。少しずつ。
ソースと和えたパスタを卵液のボウルの方に入れて和えてもOKです。この手法を取っているレストランも多く見受けられます。加熱しない分ボソボソになる失敗はしづらいですが、一度合わせてから温度調整ができないのでちゃんと温かい状態にしてから加える必要があります。同様に70℃強~75℃の状態で加えて素早く混ぜ合わせてください。
盛り付けもお皿が冷たいとチーズがかたまるので、湯煎して温めておくとグッドです。カルボナーラに限らず料理に合わせてお皿の温度も管理すると、一層美味しく料理を食べることが出来ます。
さいごに
長々と、本気で作る人のためのカルボナーラのレシピと美味しく作るコツ・ポイントを記してきました。ここまで読んで下さった方、こんなに手間がかかるなら多少味が劣ってもいいよ!と思ったかもしれません。その通り、適当に作っても、粉チーズを使っても、美味しいものは美味しいのです。ですが理由がちゃんとあるポイントをしっかりと押さえていくことで、ひと味もふた味も違った料理を作ることが出来ます。そして実際、パスタを茹でるお湯さえ沸騰していれば、完成まで10分もかからないんですよね。慣れもありますけれど。料理は理由を知っているか知っていないかで、同じ時間と手間をかけても仕上がりが大きく変わってきます。その一助になればと思います。
手抜きで十分美味しいや、というのも良いと思います。人によって、食に対する価値観は様々ですから。レトルトのカルボナーラも美味しいものは美味しいですしね。でもちょっと本気で作ってみようかなっていう時に、参考になればと思います。きっと今までで一番美味しいカルボナーラが食べられると思います。あ、本当に腕のあるシェフが作ったカルボナーラを食べたことのある方は除きますよ~(笑)。また、どんどんアレンジしてもいいと思います。材料の部分でも触れましたが、ごま油を入れたらチーズの邪魔をしない程度に白ごまをふってみるとかですね、色々試して自分好みのものをさがすのも、料理の楽しさです。
今回は600記事目ということで、批判されることが多いカルボナーラのレシピを記しました。出来るだけ詳しく書いたつもりですが、質問などがあればどんどんお答えします!
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パルミジャーノなんてねえ!ベーコンすら買いたくねえ!でもカルボナーラは食べたいっていう意識低い方はこちらをどうぞ(笑)。
同じくポイント・コツが多いペペロンチーノはこちらに記してあります。ざっとですけれど。
お菓子の記事がメインなのでまだ記事数は少ないですが、パスタカテゴリーもどうぞ。いくつか動画も撮ったので追加していく予定です。気になった方はチェックしてみてくださいね。