バレンタイン、溶かして固めただけのチョコレートを、作ったり食べたりしたことはないですか?そうしたチョコレートって、あまり美味しくないですよね・・・と書こうとしたんですけれど、嬉しくって普通に美味しいですよね(笑)。でも、もっと美味しくできます。それがチョコレートのテンパリングです。
テンパリングとはチョコレートの温度をコントロールして、口当たりを良くする方法です。
今回はテンパリングの方法と、よくしがちな失敗例をもとに原因も書いていこうと思います!
チョコレートの基礎知識(テンパリング編)
なぜテンパリングするのかを知っておいたほうがスムーズだと思うので、ちょっとだけ基礎知識。
別の記事、製菓用チョコレート・クーベルチュールの選び方にて、チョコレートはどのように出来るかと、どんな成分になっているかを基礎知識として記しましたが、今回はテンパリング編です。
基本的にチョコレート(クーベルチュール)はカカオマスなどの固形分とココアバターという油脂、砂糖によって成っています。この中で、カカオバターの性質として、6種類の結晶があり、それぞれ融点・構造が違うことが挙げられます。この結晶はそれぞれ性質が違い、その中で「おいしい結晶」に揃えることが、テンパリングの目的となります。
さて6種類の結晶のうち、口溶けがよく「おいしい結晶」は1種類のみです。融点の低い4つは溶けやすくて低濃度でおいしくなく、融点の一番高いものは溶けにくく、ザラザラとした食感(ブルームの原因)でおいしくありません。この融点の違いや、結晶化の性質を利用して、高密度で見た目も綺麗で、口溶けがよくて美味しい、2番目に融点が高い結晶を揃えることを目指します。
これらの融点は30℃前後に集中していて、一度すべて溶かし、温度管理により結晶化させていくことで、口溶けがよく美味しい状態を目指します。基本的なテンパリングの流れは以下のようになります。
1. 約40~55℃まで温度を上げて溶かす。
2. 約26~28℃まで下げる。
3. 約30~32℃まで上げる。
まず望ましくない状態にある結晶を全て溶かし、目指す結晶が結晶化しはじめる温度まで下げます。わかりやすく、それぞれの結晶を融点の低い順に①~⑥とします。うち融点が低く美味しくない結晶④の融点は約27℃、目指す美味しい結晶⑤の融点は約33℃、融点が高く美味しい結晶⑥の融点は約36℃です。つまり、全部溶かす→①~③が固まらず、④・⑤が短時間で固まる26~28℃に下げ、④・⑤を結晶化させる→この状態でも使えますが、④を⑤にすべく(核となって、全体が細かい結晶の構造になる)温度を30~32℃に上げる(作業性もあがる)というのが、テンパリングの原理となります。(実際はもっと複雑です。)
それぞれの温度は、乳成分など他の成分が入っているなどで変わってきます。もっと言えば、そのチョコレートのカカオ分は、カカオエキス+カカオバターで、カカオ分が同じパーセンテージでも、カカオバターの添加量は種類やメーカーによって違うので、一般的に温度を限定することはできません。ですがだいたいの温度は以下の通りです。
・スイートチョコレート
溶かす温度:50~55℃、下げた温度:27~29℃、上げた温度:31~32℃
・ミルクチョコレート
溶かす温度:45~50℃、下げた温度:26~28℃、上げた温度:29~30℃
・ホワイトチョコレート
溶かす温度:40~45℃、下げた温度:26℃、上げた温度:28~29℃
あくまで目安ですが、光沢や口溶けに優劣はあれど、この温度内であれば概ねうまくいきます。乳脂はカカオバターよりも融点が低いので、これを含むミルクチョコレートとホワイトチョコレートでは、溶かす温度が低くなります。またこれらを高い温度で溶かしてしまうと、タンパク質が凝固して、砂糖と共に固まって食感が悪くなるようです。
またスイートチョコレートでも、60℃以上になるとカカオバターが変質してしまうので、加熱しながらの湯煎などはしないほうがいいですね。
このように、テンパリングすることで、ツヤがあって結晶粒径が細かく、高密度のため型からも外しやすくて、口溶けも良くなめらかで美味しいチョコレートとなり、いいことずくめです。
以上が、大まかなテンパリングにおけるチョコレートの基礎知識です。
テンパリング方法
一口にテンパリングと言っても、その方法は様々です。目指す結晶は同じですが、その道程はいくつもあります。代表的なものは以下の通り。
1. 水冷法
前項で述べたように、湯煎と水で温度調整する方法。
2. タブリール法
チョコレートの一部をマーブル台に広げ、調温して戻し、温度調整する方法。
3. フレーク法
あらかじめテンパリングしたチョコを入れて、結晶の核とする方法・
マーブル台を利用しても、一部だけでなく、大理石上で全て完結させる方法もありますし、カカオバターパウダーを混ぜる方法もあります。フレーク法は種付け法(シード法)とも呼ばれますね。
マーブル台を使用すると温度が一定に下がるため、より状態良くテンパリングができますが、マーブル台や赤外線放射温度計が必要だったりと、家庭ではハードルが高いので、家庭でもやりやすい水冷法でやっていきます。
・チョコレートの溶かす温度に沿った湯煎用のお湯を用意し、ボール小の1つに入れる
・冷たい水を用意し、もう1つのボール小に入れる(水道水でOK)
・ボール大にテンパリングするチョコレートを300g以上入れる
・溶けやすいようにチョコレートは刻んでおく
温度計は揚げ物やパンにも重宝しますし、ローストビーフなどかたまりのお肉をおいしく調理する際には、食中毒を避けるために必須ですので、持ってない方は機会をみて購入されることをおすすめします。
僕が使っているのはこちらです。1000円以下で使いやすく、おすすめです。IHをご利用の方は、温度計を選ぶ際、注意書きをよく確認してください。IHで使用すると壊れてしまうものもあります(タニタの温度計など)。僕が使っているものは、そういう記述はありませんが、IHでの使用で今のところ壊れていないので、大丈夫だと思います。たぶん(笑)。
湯煎と水冷のボウルに小さめのものをおすすめする理由は、チョコレートに水が入ると急激に固まってしまいますし(シージング)、ブルームの原因にもなるからです。湯煎の湯気や、ヘラで混ぜる際にボウルが傾いて水が入るのを防ぐために、小さめのボウルに水を入れ、大きめのボウルでチョコレートを扱うと、その心配がなくなります。もちろんお持ちのボウルで注意を払ってやってもらってもいいですし、湯煎と水冷はフランスパンでもできます。
テンパリングするチョコレートの量ですが、300g以下でやるとかなりの確率で失敗します。すぐに温度が上がってしまったり、下がってしまったりして、温度調整がしづらいからです。そんなに使わないという方でも、残りは再びテンパリングして使えますし、そのままテンパリングせずに他のチョコレート菓子にも利用できますので、失敗しづらい300g以上でやるのをおすすめします。
100g単位でやりたい方は、cottaなどの製菓材料店でテンパリングにつかえるカカオバターパウダーが売っているので、そちらを利用してもいいですね。
それでは、テンパリングの方法です。画像はミルクチョコレートでやっています。
2. 電子レンジで溶かす場合は、必ず20秒未満の加熱で、取り出して混ぜてを繰り返す
3. 電子レンジは温度ムラができやすいので、スイートチョコレートであっても45℃で加熱をやめる
60℃以上は厳禁です。かならず加熱を止めたから湯煎してください。大きいものはあらかじめ刻んで、溶けやすくしておきます。
5. 下げる温度に近づいたら、余熱を考慮して水から外し、一瞬つけを繰り返して、目標の温度まで下げる
水につけては外し、混ぜて均一にし、温度を確認します。ボウルの底が冷えているので、その余熱で下がったりしますので、均一に混ぜて確認しながらやってください。
7. 余熱でどんどん上がっていくので、慎重に一瞬ボウルの底をつけては混ぜるを繰り返し、調温する
8. テンパリング完了!
9. どこかにつけて数分以内、すぐに固まって、ブルームがなければテンパリングができています。
気を抜くと温度が高くなって失敗します。同様にボウルの底が温まっているため、その余熱でも温度は上昇します。湯煎から外すときに濡れ布巾で拭いてあげるなどすると扱いやすいと思います。電子レンジは使用しないでくださいね。使用するならドライヤーです(笑)。水も入りませんし、距離を調整することで熱くなりすぎないので、失敗しづらく意外とおすすめです。
テンパリングは失敗しても、やり直しがきくので、気負わないで大丈夫です。ガトーショコラなど他のお菓子にも使えます。途中水が入って固まってしまったら、牛乳や生クリームで溶けますので、他のお菓子に利用したり、そのままホットチョコレートにしちゃってください。
ホット一息あたたまるホットチョコレートの作り方 - 生かし屋さん。
テンパリングの失敗の原因と解決方法
すでにポイントとして述べたことですが、失敗例・原因・その解決方法を書いていきます。
途中でチョコレートが固まった
水分が入ったことが原因です。水が入らないように注意を払い、あらかじめ小さめのボウルを用意することや、電子レンジで溶かすことで防げます。ただし電子レンジは温度ムラができやすいため、20秒未満で取り出しては混ぜを繰り返し、スイートチョコレートであっても45℃を目指します。
固まったチョコレートは牛乳や生クリームを加えて温めてあげると溶けます。他のお菓子に利用したり、ホットチョコレートにして飲んだり、チョコレートの半量の生クリームを加えることでそのまま生チョコにできます。
テンパリングのやり直しは出来ません。
温度を下げすぎた
融点の低い結晶ができはじめてしまいますので、再び温度を上げてやりなおしてください。水につける時間を短くするなど、温度を確認しつつ少しずつ下げてください。極端な室温も、原因となります。
温度を上げすぎた
溶かす温度を上げすぎた場合、カカオバターが変質するため、そのチョコレートはもうテンパリングできません。他の焼き菓子などにご利用ください。
最終温度を上げすぎた場合は、やりなおしてください。極端に上げすぎなければやり直せます。
テンパリングの確認で、なかなか固まらない
失敗しています。温度調整が間違っている可能性があります。温度を確認し、全体が一様になるように混ぜてから温度をはかってください。こちらもやりなおしができます。
溶かす温度が高かった可能性があります。極端に高かった場合は、やりなおしができません。かならず溶かす温度も正確にはかってください。
ブルームができる
湯気などで水が入った可能性、また調温が失敗している可能性があります。水の場合は、やりなおしがききません。注意して作業してください。また、冷蔵庫に入れすぎると温度差により水滴がつき、カカオバターが原因のオイルブルームに対して、シュガーブルームという砂糖によるブルームができます。冷蔵庫ではなく、涼しい場所で保存します。
テンパリングまとめ
テンパリングが必要なチョコレートのお菓子は、加熱せずにテンパリング後そのまま固めるものです。テンパリングをするのとしないのとでは、見た目のきれいさと、口溶け・美味しさにかなり差がでます。
一見難しそうですが、やりなおしもできますし、ポイントを押さえて作業するとちゃんとできます。見た目と味で、ライバルに差をつけたいですね(ライバルって?)。
クーベルチュールの選び方はこちら!